水虫・爪水虫・しらみ・疥癬
水虫
水虫は、白癬菌というカビの一種が感染し、皮膚表面の角質層に寄生することで拡大・拡散する皮膚感染症です。趾間や足爪、足底、踵、股部、稀に手や体幹や頭にも感染・拡散します。公共の場を裸足で歩いたり、靴やスリッパ、バスマットなどを共用してうつるとされています。
最も感染しやすい部位は足の指の間(趾間白癬)で自覚症状は痒みですが、爪白癬は痒みは無く、踵水虫もほとんどかゆみを感じないことが多いです。
爪白癬以外には、抗真菌薬の外用が良く効きますが、湿疹病変に白癬菌が感染するケースや、市販の水虫外用薬でかぶれて重症化するケースが増えています。水虫が心配になったらまずは皮膚科を受診して、真菌顕微鏡検査や湿疹の合併の有無や細菌感染症の合併の有無を判断してもらうことをお勧めします。
爪白癬には、最近まで抗真菌薬を内服することが広く行われていました。従来の抗真菌外用液では、白癬菌が繁殖している爪の裏側(下側)に外用液を浸透させることが困難なため、水虫の拡大や拡散を食い止めることは出来ても、完治させるのは至難の業と考えられていたからです。しかしながら抗真菌薬内服は、肝機能障害のリスクがあるため、肝機能の悪い方は内服できず、肝機能が正常な方も定期的な肝機能検査が必要でした。
ところが近年、爪の表面(上側)に塗るだけで爪の裏面(下側)にまで浸透してくれる爪水虫外用薬が開発され、外用薬だけで爪白癬を治すことが可能となりました。現在ではクレナフィンに加えてルコナックも開発され、治療の選択肢が広がっています。「爪水虫は塗り薬では治らないものだ」とあきらめていた方は是非ご相談ください。
しらみ
頭髪に寄生するのが頭じらみ、陰毛(眉毛や腋毛や胸毛にも)に寄生するのが毛じらみです。吸血によるアレルギー反応で強い痒みを引き起こし、他人に接触などで感染するため家族内や学校で寄生が拡大することがあります。
治療はスミスリンシャンプー(市販薬)などが基本となりますが、特に頭じらみは、頭髪に巻きつく特殊なフケと頭皮湿疹が合併して頭じらみに似た自覚症状を呈している場合が散見されますので、治療前に皮膚科を受診して顕微鏡やダーモスコピーなどによる検査によって寄生の有無を確認することをお勧めします。
疥癬
ヒトヒゼンダニが、指間や陰部や体幹の柔らかい皮膚の角質に寄生し、寄生部位である紅色丘疹に激烈な痒み(夜間に顕著)を生じるのが疥癬です。ヒトの皮膚で繁殖し、接触感染だけでなく寝具などを介しての間接感染によっても他人に寄生が拡大するので注意が必要です。
治療は、内服薬(イベルメクチン)が良く効きます。また最近は、子供や高齢でも安心な外用薬(スミスリンローション)も使用できるようになり、治療の幅が広がってきています。
ヘルペス・帯状疱疹
ヘルペス
単純ヘルペスは、ヘルペスウイルスによる感染症です。皮膚の一部が赤く盛り上がり、その内部に小さな水疱が多数出現し、ピリピリした痛みを感じることが多く、口唇や口囲(口唇ヘルペス)、陰部や臀部(陰部ヘルペス)に好発します。症状が出るのは初感染の時だけでなく、風邪を引いた後や睡眠不足が続く時や強いストレスを感じている時などに、免疫で抑えきれなくなったヘルペスウイルスが再活性化し、単純ヘルペスがたびたび再発します。
治療には、活性化しているヘルペスウイルスに対して抗ウイルス剤を使用しますが、外用薬よりも内服薬の方がより効果的です。
帯状疱疹
水ぼうそうのウイルスは、水ぼうそうが治癒した後も体から完全に排除されることなく、神経節に潜んでいます。元気な時は自然免疫で抑え込んでいますが、風邪を引いた後や睡眠不足が続く時や強いストレスを感じている時、加えて高齢で免疫機能が低下してくると、抑えきれなくなった水ぼうそうのウイルスが再活性化し、帯状疱疹を発症します。
帯状疱疹では、痛みを伴う皮疹(赤い盛り上がりの内部に小さな水疱が多数)が、からだ(全身の何処にでも発症する可能性があります)の片側の、ある特定の神経に沿った領域だけに出現(帯状分布となる)します。痛みが先行してその後に皮疹が出現することが多く、また自覚症状もはじめは痛みより痒みが優位であることがあります。
治療は、抗ウイルス剤の内服が効果的ですが、顔面の帯状疱疹や、ご高齢の方の帯状疱疹では、合併症のリスクが高いので、1週間の入院点滴加療をお勧めすることがあります。